記者会見の基本

● 伝える“意思”

日本の企業においても、コンプライアンス遵守の精神は広まっていきつつあります。コンプライアンス遵守は、リスク管理体制の構築とともに、企業のトップにおける至上命題です。 では、その企業にコンプライアンス遵守の精神の確立は、どのように評価されるのでしょうか。ここが、広報活動の重要性なのです。消費者自身は、個々の企業に対して、その企業が「(コンプライアンスの遵守を徹底している)良い企業」なのか「反社会的な企業」なのかは、マスコミを通じて情報を手に入れるしかありません。ともすれば、メディアに露出した部分だけで、「企業イメージ」を作られかねません。それが事実であろうとなかろうと、いったん広まった負のイメージを払拭するのは、大変です。だからこそ、広報の活動というのは、時には企業の存亡を揺るがすような、重要なセクションとなるのです。ここでは、普段からの情報の管理と、危機的状況における情報の管理のコツをお伝えします。このコツを押さえておけば、危機管理能力に長けた広報活動ができます。

情報マスターを作成しよう

では、具体的にどのような活動を行えばよいのでしょうか。いきなり、記者会見やインタビューの計画、というのではなく、その素地を形成していくことが重要です。 まずは、「情報マスター」を作成しましょう。

情報の収集

普段から「消費者からのクレーム」「事故の具体的な様態」「市場での動向」といった情報を広報に一極集中させて、管理することが肝心です。

  • ファックスやメールなどで届いた、クレームなどをファイルする
  • 商品に関する写真や、各部署からの情報をまとめてファイルする

この作業は、時系列にまとめると、後から見返してみても分かりやすいでしょう。このような、作業の積み重ねで、「いざ」というときに差がつくものです。 また、広報に情報を集中・管理することで、問題があったときにも、早急に対応でき、社内での情報の統一もしやすく、誤情報や憶測がもれる危険性が減らせるでしょう。

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危機管理の要「ポジションペーパー」

さて、情報マスターを普段から活用している企業の広報では、企業の危機的状況下においても、落ち着いて行動することができるでしょう。 なぜならば、普段から、「消費者のクレーム」など、各部署からの情報管理を行っているからです。では、企業における緊急時(事故・管理ミス・法令違反など)には、どのように「情報マスター」を活用していけばよいでしょうか。

まず、緊急時には、情報マスターをもとに、その事案全体を文章化して整理し、評価を加えた「ポジションペーパー」の作成が不可欠です。 このポジションペーパーをもとに、記者会見時の冒頭に読み上げる文書、記者会見での巣次応答、監督官庁向けの報告書、取引先・消費者団体などへの報告書、社内通達文書などを作成します。つまり、危機管理においてあらゆる場面で必要となってくるのです。 このポジションペーパー作成の第一の目的は、社内の認識を具体的な文章表現にして決定することにあります。社内外に向けておこなう情報開示を統一し、誤報を防ぐことにあります。危機管理対応の方々の間でも、「数人」なのか、「3人」なのか、「数十個」なのか、「9個」なのか、細かな点で食い違いが発生するものです。平時ならば、訂正もきくでしょうが、緊急時は、一分一秒ごとに情報は更新され、どんどん報道されていきます。あいまいな部分は、社内でなくすようにすることが大切となります。 つぎに重要なのが、危機管理に関係するメンバーの意思の統一です。いざというときに、「何をしたらよいのだろう」と途方にくれることになりかねません。そのきには、「ポジションペーパーを作ろう」と目的を挙げます。すると、メンバーの意思が目的に向かって動くことになります。
具体的な内容としては

  1. 起きたこと・・・現在までに判明している事実を記載。不明な点は、「○○は、調査中」とコメントをつけよう」
  2. これまでの経緯・・・予兆から、いきさつを時系列で列挙
  3. 危険性の有無・・・人体などへの影響を報告
  4. 原因
  5. 現状の対策は・・・リコールを行うのか、など
  6. 会社としての対策は

以上のことを、文章にまとめましょう。このポジションペーパーをもとにして、マスコミ向けリリース、会見時に読み上げる文書、想定問答集、取引先・監督官庁などへの報告書が作成できます。このように、広報活動では、企業のあらゆる情報を集約し、管理する重要な役目を担っているのです。 これまでのことをふまえて、実際の記者会見のノウハウをご紹介したいと思います。

記者会見の準備(コンテンツ一覧)
  1. 記者会見の基本
  2. 記者会見フロー
  3. 準備するもの
  4. 会場場所と会場セッティング
  5. 当日のスタッフ
  6. マスコミ対応方法
  7. 会見予算組み
記者会見に関するお問い合わせ・お申し込み
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